カグラはおかげさまで創業60年
 


60th_tamai
 
まずは60年前にまだ創生期と言ってもいいLPG業界に飛び込んだ創業者である父・玉井薫の先見の明に敬意を表したい。移充填ポンプを皮切りに、充填所建設や現在の主力事業である蒸発器製造販売へと果敢に挑戦していったバイタリティーは、60年という節目の年を迎えたカグラにこそ必要なものだと思う。

カグラは創業から30数年は父が、その後の20数年を私が担って来たことになる。父が高度成長期に社業を着実に発展させ、私がバブル崩壊後の「失われた20年」にそれを何とか守ってきたといったところだろうか。

父が歩んできた道程も必ずしも順風満帆ではなかったと思うが、父はそんな苦労話など一言もしたことがなかった。父が現役のうちに聞けば話してくれたのかもしれないが、リタイアした後は、「お前の好きなようにやれ」と言って社業には一切口を出さなかったこともあり、機会を逸してしまった。還暦を迎えた今になって「もっといろいろ聞いておけばよかったな…」と悔やんでいる。

私がバトンを受けてからは、手探りながら父の言葉の通り「好きなように」やらせてもらった。当時のカグラはバブル崩壊後の不況の最中、事業の方向性を見失い、社員のモチベーションも地に落ちていた。そんな中で「ベーパーライザーのトップシェアメーカーになろう」という目標を掲げ、社員とともに寝食も忘れてミニマム等の新製品開発に取り組んだことは、私にとって決して忘れることのできない大事な思い出であると同時に、経営者としての最初の貴重な経験となった。

その後、私はいくつかのことを成し遂げ、その何倍もの失敗や過ちを犯してきた。経営者として優れていたとはとても言えないが、次のことだけは常に自分に言い聞かせてきた。人任せにしないこと、自分の目で確かめること、最後は自分で決めること、決めたことに責任を持つこと、間違ったとわかったら朝令暮改も辞さないこと、そして、現状に甘んじないこと。跡を継ぐ者たちにひとつの心構えとして伝えたい。

還暦とは、干支が一巡したことを意味するもので、本卦返りとも呼ばれる。すなわち、新たに生まれ変わるという意味合いがある。会社も私もこれまでの殻を脱ぎ捨てる時なのかもしれない。父が私をこの会社に呼んだのは彼が還暦の時だった。私もそろそろ次のことを考えねばならない。前述のように私は父からあまり教わる機会がなかったが、次の世代には上記の心構えに加えて、私の経験したこと、考えていることをしっかり伝えておきたい。役に立つことも立たないこともあろう。受け取る側が取捨選択してくれればいい。 とにかく伝えることが私の仕事だと思う。

これからの30年、ますますグローバル化が進み、これまではドメスティックに完結してきた企業も、世界と何らかのつながりを持たないではいられない時代になる。AIやIoTといった情報技術の進歩が無数のビジネスチャンスを生むと同時に旧態依然とした商売をことごとく過去のものとして葬り去る時代になる。エネルギー業界もその例外ではあり得ない。再生可能エネルギーや水素エネルギーの普及はどこまで進むのか?化石燃料の行く末は?これまでの常識を疑い、既得権益に拘泥せず、世界に目を向け、果敢に挑戦することが求められる。カグラも創業期の進取に富んだ気風を取り戻さねばならない。

ますます先が読めない時代だが、カグラが目指す大きな方向性だけは示しておきたい。私自身が30年後の世界を見ることは難しいだろうが、私が蒔いた種のうち、一つでも二つでも実を結んでいれば幸せだ。

最後に60周年という節目の年を迎え、感謝の意を表したい。 まず、私にやりがいのある仕事を残してくれた亡き父に、常に慈しみを持って見守ってくれた母に、私がカグラという茨の道を選んだにも関わらず、愚痴もこぼさずついてきてくれた妻に、カグラを愛し私と労苦をともにしてくれた心許せる同志に、カグラのものづくりとアフターサービスを縁の下で支えてくれた協力会社各位に、そしてカグラを時に温かく時に厳しく育ててくださったカグラシンパのお客様に、心から感謝します。
これからもよろしくお願いします。